シースナイフと赤頭巾/小説家になろう感想

 旧ブログからの転載です。一部修正。

 見つけた経緯ですが、時期も経緯も時のかなたのことで、多分こうじゃなかったかな~程度の記憶しかないです。たしか同作者さんの「肋骨の君-月影の娘-」という作品をなろうの検索キーワード「警吏」で見つけて、そこから作者読みだったんじゃなかったっけな。2014~2015年あたりに読んだものと思われます。いや、もう少し前だったかな…どうかな…。

 以降の内容はネタバレを含んでいます。ご覧のかたはご了承ください。

シースナイフと赤頭巾/柳沢 哲 さん作

魔法使いが住む街で便利屋を営む少女、ジェイク。穏やかに、時々バイオレンスに過ごしていたが、兄に似た少年に出会ったことがきっかけで、大騒動に巻き込まれていく。

小説家になろう あらすじより

 悪い魔法使いとそんなに悪くない魔法使いとマフィアがごった煮で暮らしている街で、ジェイクは相棒のユーリと二人で便利屋をしている。危険な街だが、ジェイクにとっては慣れたもの。よく思い出せない昔の記憶があること以外は、不安定ながらも、ユーリとなんとか暮らしていける。ミセス・ブランカからもらった恐怖のニシンパイを家に持って帰って、アパートの隣人ウーに挨拶して、ユーリがやっている「よくない仕事」に文句をつけて、本屋で出会った謎のウルフヘッド男に胸騒ぎを感じたり……そんないつもの日常が、兄に似ている少年と出会ったときから、少しずつズレはじめてゆく。 っという雰囲気の物語です。

 これは……これは……、父娘萌えの業を背負った読者に刺さる!(やめろ)

 少女ジェイクちゃんの視点で話が進んでいきます。そのジェイク目線ではまぁまぁクールに見えなくもない相棒・保護者のユーリなんですが、ジェイクが行く先々で、皆口をそろえてそのユーリ→ジェイクの溺愛……偏愛……いや溺愛……ぶりを指摘してくる、という素晴らしい構成になっているので変な笑いが出てきます。いや、いや、笑っちゃだめだ。ユーリにとっての宝物なんだね。でもちょっとは子離れ、しようw

 序盤はその親子いちゃいちゃなわけなんですけど、ちょいちょいファンタジーな要素が挟まってくる。この世界では、銃や麻薬などのアウトロー的要素の一部に、魔法と呪いが含まれているんですね。魔法=やくざモン。

 魔法はまっとうな人間が扱うものではないし、実際この作品内に出てくる魔法使いたちは軒並みカタギではない。そしてジェイクは魔法が効きにくい性質を利用して便利屋をやっている。……っていう出だしなので、普通にジェイクはちっちゃいのにすごいことやってるなァ怖い世界だぜ……とか思っていたら、世界もクソも、ジェイクは普通の女の子じゃなかった! というふうにお話が転がっていく。誰が何をたくらんでいるのか、何を望んでいるのかが錯綜していて、最後まで目が離せない。

 登場人物それぞれが、かなり性格がはっきりしていて、魅力的です。ユーリは全ての言動が死亡フラグに見えるし、アインは全体的にドンマイだし、チヨはふんわりおっぱい!(性格?) 殺し屋的なお父さんが娘を偏愛する……と聞いてなんだか胸がトキメく人や、娘ちゃんとお付き合いするにはパパの屍を越えていけ……的なシチュエーションになんだか胸がアツくなる人や、いま娘ちゃんのことを厭らしい眼つきで見ただろアァん??……的な難癖つけに何だか胸があたたかくなる人に、お勧めの作品です。