2022/05現在、小説家になろうで連載を追いかけている作品です。見つけた経緯について、記憶があやふやなのですが、たぶん2021年の10月くらいに小説家になろうで「冒険」で検索をかけてひっかけたような気がします。冒険というか、女の子が旅する感じのものを読みたかったので、「旅」も検索ワードに入れていたかもです。
以下ネタバレを含んでいます。ご覧のかたはご了承ください。
豆畑の外は世界の果て/大石安藤 さん作
小さな村に住む三つ子の姉妹が、一緒に暮らすことに疲れてそれぞれが新しい世界を探しに旅に出ます。朝という名の長女は東の砂漠の国へ。昼という名の次女は川を下って南の国へ。夜という名の三女は列車に乗って西の国へ。3人はそれぞれの新しい世界を見つけられるのでしょうか。
小説家になろう あらすじより
すっきりさっぱりフィーリングで突き進む「朝」、ぼんやりおだやかでなぜかトラブルに巻き込まれがちな「昼」、冷静沈着で不思議な雰囲気をもつ「夜」、三人は同じ顔の三つ子の姉妹。ふとしたことをきっかけに、三人は家を離れてそれぞれの冒険に出かける。閉塞感のある家を離れて、新しい土地へ、新しい出会いを求めて。ところが、ちょっとした気分転換、小旅行のつもりだったのに、なんだか旅の行く末が不穏な感じに……。 っという雰囲気の物語です。
この物語、見所がいろいろあります。ほんといろいろあります。見所というか、私の好き好きポイントにズドンした要素、と表現したほうが正確かもしれません。その好き好きポイント、具体的にはこちらです。
- 女の子が主人公 ※20代前半と思われる
- こういうの好きなんです、ありがとうございます…
- しかも三人いるから三タイプ楽しめる
- 長女:冒険パートを楽しむ(*´∀`*)
- 次女:トラブルにあってアワアワしているのを楽しむ(*´∀`*)
- 三女:冷静パートなので長女・次女でドキドキした心を安定させる(*´∀`*)
- 19世紀後半~20世紀前半ぽい世界設定!※電気はないと思われる
- 列車が高級品とか、飛行機で郵便とか、時代感がちょうど好き!
- いろんな国を世慣れた案内人とウロウロと旅する
- 砂漠を歩いたり、街道を歩いたり、森を歩いたり、
- 国境を越えたり、列車に乗ったり、野宿をしたり、
- 全然観光できてないけど…がんばれ長女!
- 姉妹間でAから見たB、Bから見たA、みたいな互いの人物評が挟まる
- 本作独特かな~っと思う要素です。三つ子たちのお互いが思っている自分たちの違いとか、共通点とかが、ちょっととぼけた地の文の感じで挟まってくるのが好きです。物語が進むにつれて三人の解像度が上がっていくのが楽しい。
かるい気持ちで列挙したらまじでいっぱいありましたw 好き好き!
わりと場面がさくさく切り替わって、物語がどんどん進むので、部分部分ごとに全然違う「好き~!」要素が出てくるのでほんと読んでいて楽しいです。ここからは自分が好き~っと思った場面を並べてみます。感想というか変なうめき声みたくなってしまいましたが…
【三人が家を出る~朝が砂漠を意気揚々と進むまで】
まず最初に読んで、あらすじでわかっていたことだったのですが、登場人物の名前がすごい。朝昼夜。あさひるよる??…え、マジで? と思っていたら、そのように呼ばれている、という通り名でした。本文を読む前、あらすじだけ見ていたときに「名前が概念だと…? 神話が始まっちまう~ッ!」とか思っていたのは完全な杞憂でした(神話のはじまりぽくないですか?)。個人的にツボったのが、三人が家を離れるきっかけ。まさかの男トラブルw めちゃくちゃ俗っぽいツカミだな~っと引き込まれました。そして、その勢いで砂漠に突撃する朝はやばい子だなと思いましたw 冒険?と夜が不可解な顔をするのもさもありなん…
【朝昼夜がそれぞれ第一村人(?)を発見してお話したところまで】
三人が別れて旅に出て、それぞれ旅の最初に出会った人たち…人たちが…濃ゆい~濃ゆいよ~。とくに朝! いきなりすごいの引いちゃったな~…砂漠の男がすごいいいキャラしているので、自分はこの時点で朝パートがめちゃめちゃ楽しみになりました(*´∀`*) 夜はなにか変なフェロモンを出しているのではないかと疑いたくなるような人たらしぶりを発揮。そして一方では昼パートがものすごく心配になりましたw き、きみ大丈夫かこの感じで…→大丈夫じゃなかった(‘_’)
【昼が家に帰って、夜が人工海を歩いて、朝が逃げるところまで】
なかなか大変な目にあったことで昼の冒険に終わりが見えてきて、夜とアシがさみしくも穏やかに別れようとしている一方で(アシかわいいよ~!)、朝の冒険がどんどんスケールが大きくなってハチャメチャになっていって、これ家に帰れるの? みたいな感じが出てきて、読んでいてとても楽しい。砂漠の男がツンツンしておりぜんぜんデレないのもまた楽しいw(この楽しみかたはあっているのか?) いち読者のすごく勝手な感想なんですが、この僧侶の修行ってやつ…やつがね…まーじでロマンチックなんですよ…大丈夫と思えるまでそばにいるってオマエーッ! なんだその誠心誠意はオイーッ!! うつくしい真心かよーッ!! ってバタバタしてしまいました。バタバタするしかないッ!
【昼が手紙に戸惑って、夜が家の帰路について、朝が国境を縦走するところまで】
こうやってシーンを並べただけですでに面白い(*´∀`*) 夜と昼の二人は家に戻っているのに、朝は砂漠→砂漠の南の国→そのさらに南の国→そのさらに山向こうの南東の国…と逆にどんどん遠ざかるルートに進んでいる。深刻な旅であるはずなんだけど、朝はけっこうのんきというか、冒険を普通に楽しんでいるところがあるので、こっちも楽しく読めちゃいますね。旅のさなかに、男から説教・呆れ・皮肉・しかめつらのオンパレードを食らっているにもかかわらず、「南の山脈。それは素敵だわ」とか言えちゃうメンタルが強すぎるw 朝のいいところはいろいろあるけど、心のありようが素直なところ、魅力的だなっと思います。森の中でパンをかじりながら、朝と男で感謝と信仰心の話をするシーンがすごく好きです。うひ~尊い(*´д`*)
【夜と昼が再会して、朝が牧童と一緒に僧院に身を寄せるまで】
すっかり忘れていた頃に飛行機乗りが出てきたので、昼と一緒に「誰?」って感じになりましたw 振り返るとこの飛行機乗りが旅のきっかけというのが…なんかすごいw ぜんぜんそんなふうに見えないけど、コイツ重要人物じゃん…。このあたりの昼目線の飛行機乗りの姿とか、ジャンジャックの手紙に対する所見とかを見ていると、表面は優しげなふうなんですけど、実は昼もなかなか苛烈なものをうちに秘めているんじゃないかという気になってしかたがないです。ていうか実際わりと容赦ないw 夜と昼の二人でジャンジャックの手紙品評会をするシーンでヒエーッってなりました。はちゃめちゃに言われてるぞジャンジャック!w
朝の旅のほうは、古語のくだりで牧童ハバラがついにデレたので(※主観です)手を合わせて感謝してしまいました。アリガタヤー。ふたりはずいぶん気安い仲になったよね(※主観です)。朝は隙を見て隠れてあっかんべーまでしているし、ハバラも列車と僧院で楽しそうにおしゃべりしてるじゃないですか(※主観です)。でもでも、ここまで90,000字なんですよ奥さん!! 記念にツイートしてしまいましたよ奥さん!!
感想書くためにまた少し読み返したのですが、ちょっと読むと、最初に読んだときに見落としていた内容とかもあって(三者三様のぶち猫の構いかたとか…昼がんばれ…)、新しい面白さがあって、この物語に出会えて良かったな~っとニコニコしてしまいました。よかったよかった。今後も、朝の冒険がどうなってしまうのか、ハバラを見返す日は来るのか、昼と夜は朝の手紙を受け取ることができるのか、…あとジャンジャックはフラれてしまうのかw、目が離せない!
同じ育ちかたをした姉妹だけど性格が違う、みたいなシチュエーションが好きな人や、口が悪いけど行動は誠実な旅の相棒、と聞いて「ウヒョー」と盛り上がっちゃう人におすすめな作品です。気候も文化も違う土地を弾丸ツアーで渡り歩く旅行記っぽい側面もあるので、そういうのが好きな人にもおすすめかもです。