Seventh 通学するつもりが地味に異世界に来ていた/小説家になろう感想

――刮目して見届けよ! ギスギスファンタジー!

 2023/03現在、小説家になろうで連載を追いかけている作品です。なんと毎日更新です。ちょう嬉しいです。わお!

 見つけた経緯についてです。2022年末の冬休み、オンノベ読みまくるぞイイイイヤッホーーーーゥみたいな気持ちで小説家になろうを漁りまくっていたときに出会いました。「女主人公」「冒険」「魔女」あたりの検索ワードで探していた記憶があります。以前似たような検索ワードでめちゃめちゃ素敵な作品を見つけられたので(前の記事です)、柳の下のドジョウを狙ったものと思われます。

 以下ネタバレを含んでいます。ご覧のかたはご了承ください。

 2023/03/05 誤字修正

Seventh 通学するつもりが地味に異世界に来ていた/夏原秋 さん作

 母子家庭の夏季。両親の過度の愛情に困惑する俊。人より本が好きなフリーター、倫。 祖父の死により孤児となってしまった哲。元いた世界から突然呼び寄せられた4人の男女は、異世界で史上最悪の「魔女」を打倒する使命を与えられる。
 有無を言わせず与えられた手に余る力を前にして、それぞれが悩み葛藤しながらも、誰かのために命を懸ける意味を見出してゆく。

 ヒューマンドラマ色が強めですがちゃんとバトルは出てきます。殺陣あり、魔法?あり。悪役令嬢とイケメン冷血騎士様も登場予定です。ふつうの女の子夏季がいろいろ乗り越える系。

小説家になろう あらすじより

 突然異世界に召喚された夏季、哲、倫、俊。彼らが呼び出されたのは、悪しき魔女が『黒』の力で世を脅かしている世界――その魔女の脅威を取り除くよう、セボの国から要請される。もとの世界に帰る手段は相手に握られており、断るわけにはいかない。しぶしぶ四人は魔女退治の訓練に取り組むが、非協力的な城内の官僚、慣れない過酷な訓練、冷酷すぎる兵隊長からの懲罰とトラブルが絶えない。そしてなにより、同郷の絆で結ばれているはずの自分たち四人ですら、意見がぶつかり、足並みをそろえられずに衝突が続いてしまう始末。こんなんでホントに魔女退治ができるのか……? っという雰囲気の物語です。

 なんていうか……なんと表現したらいいのか、とにかくびっくりするほど登場人物たちがギスります。剣と魔法のギスギスファンタジーです。なぜ彼らがギスってしまうかというと、性格ヤバ男とヤバ子が山盛りで登場するからです。おそるべきことに、彼/彼女らは、「うわ~こういうヤツいるよォ」という妙なリアリティを想起させる感じの悪さを持っているのです。微妙に共感・理解できてしまうのです。たまりません。(*´д`*)クゥ-シミワタルゥー

あまりのギスり具合にツイート

 ヤバすぎ人物が盛りだくさんなので、とてもここでは紹介しきれないのですが、個人的にぶっちぎりでやばいのは「倫」「俊」「ラートン」の三名かな~っと思いました。何がヤバいかって、彼らが味方陣営ということです。味方なんです。こんな味方いやすぎるwwwと草を生やさざるをえない性格破綻者です……さっそく紹介していきましょう。キャッチコピーもつけてみました。

「倫」――良くない意味でのマイペース
 小説とかドラマとかで、「人間に興味ない」みたいなふうの説明がされている人がいたとして、だいたいの場合は興味ないから他人と関わり合いをもたない、避ける、という方向性のキャラクターになるかと思うのですが、倫の場合は「オマエは無価値だとこき下ろす」まで入っているのでものすごい仕上がりになっています。序盤で頼りになる年上のお姉さんなのか? と思わせてからの、11部でのガン無視読書シーンで震えあがりましたw こいつ本物だッ!

「俊」――恥ずかしすぎる男
 本作で二番目に可哀想と思われる男です(一番は哲)。可哀想なのですが、その可哀想さをブッチぎるオレ様中心主義なため、いい感じに同情の感情が相殺されて、彼がかわいそうな目に遭ってもあまり心が痛みません(?)。なにかとスベり倒しぎみで、他人の手のひらで踊っているときほど輝かしい活躍を見せる彼が好きです。

「ラートン」――おまえ人間性に問題あるって自覚してるのかよ!
 あらすじで「イケメン冷血騎士様」とキャッチーな紹介をされている男です。まじで冷血です。冷酷な暴力野郎なので、イケメン成分がだいぶ霞みます。ときどきその美貌について本文で触れられるので思い出しますw 彼は信念の男であり、自分が正しいと確信して常に行動している、と思っていたので、61部読んだときにびっくりしました。人間性に問題ありって自覚あるのかw 自覚があってこの状態というのもすごすぎるw

 ここまで書いておいてアレですが、本作において自分が好きなのも実はこの三名です。大好きです。一番好きなのは主人公の夏季なのですが、主人公を除くとこの三人がダントツで好きです!(哲は……あまりに可哀想すぎてつらくなるので……ドンマイドンマイ)

 怖いもの見たさというか、地雷原を平気で進み、案の定地雷を踏み、周囲にギスギスをまき散らすその様、あるいはとんでもないやらかしをとんでもないタイミングでぶちかまし、恥をかいてもすぐ復活する強靱な(?)メンタル、そして正論武装でKY行動――読んでいると、胸のなかに爽やかな一陣の風が吹いたかのような、こころよい気持ちになります。晴れやかな気持ちになるッ! ギスギス読書体験からしか摂取できない栄養があるッ! (*´д`*)クゥ-シミワタルゥー!

 しかもこの三名はもとの性格がゲキヤバなため、第二章に入り、じゃっかんの穏やかさ・対人能力を身につけたことで、すごく素敵な感じに……いやヤバい一面を隠しきれるほどではないのですが、それでも素敵な感じに……どうかな……いやいやまだ普通にヤバいなコイツ……みたいな、読んでいる私の手のひらをクルクル返させてくれるのです。面白すぎて目が離せないです。
 この三人がヤバいため、主人公夏季のマトモさが輝き、好感度が爆上がりするという説もあります。自分調べです。

 2023/03現在、物語は佳境を迎えており、現在は魔女討伐のためいよいよ敵本陣に乗り込み……といったところで、夏季の母がラスボスオーラを醸し出しながら参戦(まじでここびっくりしました、主人公の母親がこんな立ち位置で出てくる物語を読んだことなかったのでめちゃくちゃ興奮しました)、魔女の奇襲を受けて一行は大ピンチに。ものすごくありがたいことに、本作は完結保証がされている毎日投稿の作品なのです。ホントにありがたい。マジでありがたい! このまま最後まで見届けたいと思います。がんばれ夏季! 唯一の良心!(イルタもまともだけど、ヤバい人物に囲まれている率は夏季のほうが高いので……)


 振り返ってみるとギスギスアピールしかしていないような……いやいや、あまりに人間関係の描写が秀逸なのでこんな感想になってしまうのです。物語は群像劇っぽく視点が変わりながら進みます。そこも本作の魅力の一つかなと思います。自分が好きなヤバヤバ三銃士を紹介してしまったので書き切れていないのですが、マジもんのヤバはほかにもいます。王女様とかカルーとか母とか。そういうヤババな人に視点がわたされたときめちゃくちゃドキドキしてしまいます。王女様の期待を裏切らない感じ……嫌いじゃないぜ!

 主人公に優しくないギスギスファンタジー、おすすめです。