旧ブログからの転載です。一部修正。
見つけた経緯について。なろうで「北国」をキーワードにして検索かけていたときに、同作者さんの「獣の譬」を引っ掛けて、……そう、獣の譬の第一部「山犬の瞳」がたまらなく良かったんですよ。犬の忠誠、ひたむきさがね(番外編のちょっとゾッとする獣憑きの聖人もまたイイ!)。そこでファンになってまた作者読み→ぎょわ~またすごい面白いお話出てきた!!っていう流れです(どんなだ)。時期はいつだったかな…2015~2016年あたりに読んだ気がします。
以降の内容はネタバレを含んでいます。ご覧のかたはご了承ください。
ユルペンニアの魔法使い/灰撒しずる さん
大河枝地帯の南に位置する肥沃な町ユルペンニア。少女イダの家が営む宿屋には、彼女が生まれた頃から一室に居座り続ける魔法使いの男がいた。無愛想だが町の人々に慕われている彼はある日町役場に呼ばれ、隣町ドーランからの宣戦布告状を見せられる。――ある町娘と魔法使いの戦争の話。
小説家になろう あらすじより
『幼神の庭』シリーズ二作目。
少女イダは宿屋の娘。そして、イダの宿屋には、不思議な力を持つ魔法使いが住んでいる。妖精鳥の上着を被って鳥になり、いつも同じような格好で外に出かけて、同じような表情で帰ってきて、まるでなんでもないような調子で町の者たちを助ける魔法使いだ。だがある日、隣の町から宣戦布告状が届けられる。魔法使いは紙の向こうに、もう一人の同類の姿と、まき散らされる死と血の気配を予感する…… っという雰囲気の物語です。
あらすじにもあるとおり、シリーズ第二作目です。といっても、世界観/舞台が共通であり、ストーリーそのものは別の時間軸・別の登場人物の話になっているので、この「ユルペンニア」から読んでも大丈夫です。(実際、自分はこちらから読みました。そのあと第一作目も読みに行って、それがまたステキな話でね……)
地に足のついたファンタジーです。ええ、もう、びっくりするくらいの硬派なファンタジーです。宿屋の娘イダ(一般人)と不思議の世界に片足をつっこんでいる魔法使い(魔法使い)のそれぞれの視点で物語が進んでいくのですが、もうこれがたまらなくステキ! イダ視点でほんのり見えていた魔法の気配が、魔法使い視点ではガッツリ書かれているんですよ。その外側から見える魔法と内側から見る魔法が両写しになるので、神秘的なだけではない、生臭さもあわせもった「魔法」「魔法使い」の存在が見えてきて、あ~この世界はこういうふうになっているんだな~っとドキドキするのです。魔法使いは騎士であり狩人であり、盗人でもある。いずれ彼らが迎える最期の時ってヤツが、すさまじい。愛ってか……業が深い/(^o^)\ ちょっと女王の愛が重すぎますよ~
とにかく、物語中に魅力的な言葉がドンドコ出てくる。「妖精の騎士」「禍蟲」「硝子の剣」に、「妖精鳥の衣」! そしてこの物語に出てくる「妖精」は、間違ってもティンカーベルではないw 屋根裏のゴブリンとか、しもべ妖精トビーとか、ゴラムの系列です。間違いない。笑
好きなポイントはいろいろあるんですけど、シーンで言うと、魔法使いの罠が発動する場面かな。人知を超えた恐ろしい力がふるわれる、その絵面の描写がすごい。怖い。
あと一見平坦なようでいて実はめっちゃ絆がありそうな、魔法使いとイダの関係も最高です。これからどうなっていくのかなぁ~っとニヤニヤ(・∀・)できます。第一作を読むと黒蜥蜴にソワソワする部分もあり、シリーズ通じて読んでも面白い。黒蜥蜴さんは、たぶん、人間にいろいろがあるように、トカゲもいろいろいるってことなんでしょう。