旧ブログからの転載です。一部修正。
見つけた経緯について。う~ん……記憶が定かではないけれど、おそらくなろうでキーワード「聖女」で検索して見つけたような気がしますね。2013年くらいはマイ聖女ブームというのが来ておりまして、アホみたいに聖女聖女で検索かけていたはずです。ここだけの話、自分の中で「検索ワードに対する当たり作品率」というのを心のノートに記録しているんですけど、「聖女」はけっこう当たり率高いんですよ。ほか、「北国」「田舎」も当たり率高い気がします。超どーでもいい話ですけど、「お姫様」よりも「お姫さま」で引っ掛けた作品群のほうが、私は好きです。( ´_ゝ`)
以降の内容はネタバレを含んでいます。ご覧のかたはご了承ください。
聖皇御役記 〜水教異文録〜/枯竹四手 さん作
聖都内乱が終結し、地上に降臨した「聖女」が聖皇となった。これは聖皇御役として彼女の側使えとなった「私」の日々を綴った日常譚である。
小説家になろう あらすじより
父に勘当されて以後七年間、放浪の民として楽を奏で気ままに暮らしていた「私」は、ある旅先の市で遠縁の老人にすがりつかれて生家の窮状を知る。大叔父であるという彼の提案に乗って生家再興の道を歩むため、水教の大堂院にて世俗の垢を落とすこと三年。しかし戻ってきた聖都では内乱が勃発しており、大叔父が与していた湧流貴族も凋落の一途をたどっているという。既に湧流貴族を離れていた「私」だったが、あおりを受けて一度職を解かれる。すぐにでも復職できるだろうと踏んでいた「私」の元に、しかし、深夜、頭巾と長衣の人物が訪れる。……っという雰囲気の物語です。
プロローグがめっちゃいい……! めっちゃいい!!(2回目) これぞダイジェストの見本と言わんばかりの、見事な半生語り倒しです。もうここ読んだだけでグイグイ物語に引っ張りこまれます。これこれこんなんがあっていま私はこうなっているのだ、さてそれから…… ってやりながら、「上流」に「湧流」に「水教」に「聖女」なんて怪しげなワードが放りこまれてくるものだから、わくわく感がとまらない\(^o^)/
かなりざっくりな分類としては、時代劇のようなジャンルになるのかな。それも、大岡越前物(ほんとにこの分類で合っているのか?)。日の丸が江戸の天下太平時代の代わりに、聖都の聖皇と水教の御威光が爛々と目を光らせる時代、ってな具合だろうか。この「水教」というのが、この物語内の重要な要素になっており、聖都で暮らす者たちは、たいていが敬虔な信者になっている。だからやんごとなき身分の宮仕えの人たちは「跳礼」するわけだし、「澄み渡りて流るる清浄の白き乙女」をあがめたてまつる……のだが……これがねえ。いきなり、その聖女の素性が怖すぎる(@_@;) 聖女様のあれこれは後天のものなのでは……これ誰か悪いやつの陰謀なのでわ……いやいや……みたいなことを、誰も言いだせないIN☆聖都なう! みたいな(やめろ)
こういうカルトめいた雰囲気を、そういう時代文化なのだと書ききる筆致がすごい。こういうものがあるんでしょうね~と思っちゃうんだよね。土台がしっかりした物語舞台ですので、我々読者は安心して、「私」の目を通して聖都を冒険することができるんですねぇ。
冒険、というか、不穏な素性ではあるものの、聖女がかなりイイ性格をしていらっしゃるので(性格が良い、ではない)、御付き役に選ばれた「私」はいやおうなく聖女の目となり耳となり、なにより足として地取り捜査に精を出すのであった……みたいな感じですけどw 連作短編的な味わいですので、1回こっきりの登場人物が多いかな? と思っていたんですが、ちょくちょく顔見せするヒトもおり、少しずつ、世界の手触りが広がっていくような、良い塩梅の進み具合であります。続き、読みたいです(小声)。
跳礼って、その場でピョン!ってやってるのかな?(確かに高齢の方は略礼するよねw)
創作大河ドラマ、という単語になんだかトキメキを覚える人や、平静を装いつつも内心動揺しまくっているが表には出ない系主人公が大好きな人に読んでみてほしいな~と思います。あと、一話完結型の連作短編、ちょっぴりミステリ要素もあるよ、と聞いて嬉しくなっちゃう人にもお勧めかな。